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まちのがんばり屋さん

【ものづくり 枚方】 くらわんか餅 NAOKI 森野 直樹さん

《伝統の手づくりの技を 今に引き継ぐ》

2016/01/04

■本物の価値を伝えたい

 枚方の歴史を語るうえで欠かせないのが「くらわんか舟」。江戸時代の昔、茶船、あるいは煮売舟といわれる船で、淀川筋の独占営業権を得て、船客目当てに餡餅、ごぼう汁、巻き寿司、酒などを売って商いをした。遠くは江戸の方まで、その名は知られていた。
 その枚方の住宅街の一角で、今なお“くらわんか”の伝統の味を守り続ける人がいる。餡餅一筋にかける、くらわんか餅 NAOKI代表、森野直樹さん。枚方生まれ、根っからの郷土・枚方を愛する人である。
「くらわんか餅という名称はよく知られていますが、誤解されておられる方もいらっしゃいます。餅に餡を載せ、手型を入れて握ったものが本物のくらわんか餅。焼き餅とは製法が違います」。
餅づくり4代目。修業を積み、伝統の技法に固執する。もっとも若い頃は、跡を継ぐなんてまったく考えなかった。
 ある時、事業継承が途絶えることに危機感を抱いた。
 「私が継がないと、くらわんか餅はこの世から廃れてしまう。連綿と続く、この味、この技、この形を残したい。本物の価値を、多くの方々に知っていただきたい。そんな切実な思いから、老舗の看板を受け継ぐ覚悟を決めました」
●とろけるような味わいは、まさに絶品
●熟練の技で、餅一つ一つに命を吹き込む
●蒸し器調整にも、相応の年季がいるという

■無添加・無着色にこだわる

 今日、市場に流れる大半のお菓子が、機械を使って大量生産されている。和菓子も例外ではない。くらわんか餅 NAOKIは創業以来の手づくりにこだわる。
「手づくりにこだわるのは、無添加・無着色を信条としているからです。素材の持ち味を、美味しいうちに味わっていただきたい。菓子づくりは極めて繊細。その時季、その日によって温度や湿度などの影響で色・風味なども変わり、そのためには、微妙な加減が必要です」。
 同店の看板商品、「元祖こし餡」。良質の北海大豆を使用、口に運べば、雄大な大自然の恵みが広がる。
 さらには、「プレミアムさつまいも」、「栗の響き」、「純しろ餡」、「枯葉きな粉」、「濃厚紅茶」、「ほんのりミルク」、「濃厚ほうじ茶」、「ゆず流れ」と味のバリエーションも豊かである。日本の四季の風情もたっぷり採り入れ、旬の味覚商品である「自然トいちご」、「納涼夏みかん」など、素材の魅力を最大限に生かすことを旨とする。
●上質白双糖を用いた、後を引かない甘さは格別
●日本の四季折々の贅を使い、真の美味を究める(特別商品:丹波栗グラッセ)

■くらわんか文化を今に

 昔から枚方に伝わる、くらわんか餅。この郷土銘菓の由来は、くらわんか舟と切っても切り離せず、もう少し歴史を振り返ってみることも一興である。
 古来、枚方は大坂(今の大阪)と京都を結ぶ交通の要衝として栄え、江戸時代には、宿場町として、そして淀川水運の京都伏見と大坂八軒家を結ぶ「三十石船」の中継港として賑わいをみせた。「三十石船」という名称は本来、米三十石相当の積載能力を持つ船のことであるが、江戸時代では、淀川を上下して、旅客を輸送する乗合船をさした。
 有名な十返舎一九の「東海道中膝栗毛」。弥次喜多の二人連れが三十石船に乗った場面で、「飯くらわんかい。酒のまんかい。サアサア皆起きてくされ。よう伏さる(寝てる)やつじゃな」と、粗野な言葉を口にしながら、鍵爪をかけて近づいてくる小舟の様子が描写されている。
 この時代、くらわんか餅が、くらわんか舟と呼ばれる商い船とともに次第に有名になり、第14代将軍・徳川家茂の京都・大坂行きの道中では、各地で様々な食べ物が献上されたが、その一つとして名を馳せていたのが、くらわんか餅なのである。
●かつて辺りは鍵屋浦と呼ばれ、船番所があった

■止まったらあかん

 何事も伝統の継承だけでは、明日がない。
 老舗和菓子店で職人として歩んできた経験に基づく菓子づくりへの飽くなき追求。その一方で、伝統的ながら、斬新な和菓子創造の旗手として偉才を発揮する。
 洒落た店舗外観、季節の趣を映す商品、優美な展示、モダンなパッケージ…。どれも、自身のオリジナルな発想である。
 ご母堂のなおみさんは、直樹さんを「感性人間。独創性の富んだ人」と評す。
 時代は変わっても、くらわんか餅は、くらわんか餅。
 「ずっと長く、くらわんか餅を愛してくださるお客様とともに、より多くの方々から支持されることが、大きな課題だと思います。“伝統”という流れの上に、“進化”という波を創っていきたい。そして、あちこちのイベントに出向き、さらにPRを広めていきたい。そのためには、絶対止まったらあかん、止まったらあかんのです」。
 そう語る4代目の瞳には、一意専念、枚方の伝統銘菓を引き継ぐ、熱い使命感が満ち溢れていた。
●パッケージ一つにも、洗練された感覚が
●洒落た店頭看板に、店主の心意気が感じられる
●味の伝統を守る! ご母堂の森野なおみさんと
●閑静な趣の枚方・伊加賀本町、緑の外観の佇まい

■取材を終えて
 
和菓子を取り巻く市場環境は、スーパー、コンビニとの競合もあり、激化を増しています。『家計調査年報』(総務省統計局)の「和菓子に対する1世帯当りの年間支出金額の推移(2人以上の世帯)」によれば、《他の和生菓子》への支出は、平成26年は9,117円で、23・24年には8,900円台に落ちたものの、それ以前も含め横バイの状態です。
 最近では、健康志向の高まりとともに、和菓子の原材料となる豆類などに植物繊維や良質のタンバク質を多く含んでいることから注目されています。
 伝統を守り、品質にこだわり、新たな菓子の開発に意欲的に取り組んでいる枚方の老舗和菓子店の今後に期待したいと思います。
■くらわんか餅 NAOKI
 〒573-0055 大阪府枚方市伊加賀本町8-13
 電話:072-865-7872
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